災害などで取材や報道にあたる際のセルフケアについて

 Advice in Japanese on self-care for journalists and teams covering disaster situations, developed by the Reporters' Stress Research Group.

報道人ストレス研究会

惨事ストレスマニュアル

updated 2011-03-21 

今回の地震災害で取材や報道にあたったジャーナリストの皆様 に。

被災地で取材・報道活動をされたジャーナリストの皆様には、市民の一人としてこころより感謝申し上げます。 
 多くの皆様は、様々な取材報道活動をされ、おそらく十分な睡眠時間もとらずに、勤務されたかと思います。 
 私どもは、阪神・淡路大震災や雲仙普賢岳災害でのジャーナリストの方のご体験に関する調査をふまえて、 
ジャーナリストの方が災害現場での活動中や活動後に体験するストレスについて研究しております。 
 その立場から、被災地での活動後にご留意いただきたい点がありますので、述べさせていただきます。 
 悲惨な現場で活動をされたジャーナリストに活動中や活動後に現れる心理反応について、少しご説明をさせてい 
ただきます。悲惨な現場で活動されたジャーナリストは誰でも、活動中や活動後に以下のような心身の変化を経験 
することがあります。 
a)興奮状態が続く: 
 興奮状態が続き、寝付けず気持ちが落ち着かなかったという症状がよく見られます。特に「もっとこうすれば良 
かったのではないか」などの自分を責める気持ち、「もっと取材をしなければならないのでは」という焦燥感など 
が起こりやすくなります。 
b)体験を思い出す: 
 折に触れ、現場のことを思い出し、フラッシュバックが起こることがあります。写真や記事を見たときだけでな 
く、においなどでも急に思い出すことがあります。 
c)思い出すことを避けようとする: 
 現場で起こったことについて、人に聞かれることも、思い出すことも煩わしくなることがあります。記憶が曖昧 
になったり、現場に関する資料を見たくなくなることもあります。 
d)周囲との摩擦: 
 周囲の人に対して、普段なら感じないような不満や怒りが急に出てきたり、人間に対する信頼感が急に高まった 
り、逆に極度の人間不信に陥る人もいます。 
e)話せなくなる: 
 現場のことを話せる人が周囲にいないし、話しても分かってもらえないと思って、無理に胸にしまい込んでしま 
う人もいます。一人きりだという孤立感に囚われる方もいます。 
 これらはいずれも「惨事ストレス」と呼ばれるストレス反応の一部です。厳しい現場で活動した方には、誰にで 
も普通に起こりうる状態です。ただ、こうした反応、特に上記のa~cの反応が長引いたり、重くて苦しさがとれ 
ない場合には、専門家に相談する必要があります。 
 惨事ストレスを予防し、少しでも軽くするために、皆さんに心がけていただきたい点をまとめました。 
1)少しでも休養をとって下さい。 
 皆さんは使命感や伝えたいという強い気持ちから、睡眠も十分にとれていないのではないでしょうか。この災害 
報道は長期化します。現場を知る皆様が倒れたら、今後の活動に大きく影響します。長期の活動に耐えられるよう
に、少しでも休憩や休養をとって下さい。 
2)ちょっと落ち着いたら、仲間や上司と話し合ってください。 
 飲み会でも結構です。お茶の会でも結構です。1週間後でも2週間後でも、現場に行った仲間や理解ある上司と 
話し合う機会を作って下さい。取材時や報道後に感じたストレスを、胸にしまい込まず、率直に話し合ってくださ 
い。 
3)親しい方とともにすごして下さい。 
 家族がいらっしゃる方はご家族と、恋人やご友人がいらっしゃる方は恋人やご友人と、ともに過ごす時間をとっ 
てください。ご家族やご友人は、皆さんのことを気遣い、心配しています。その方たちと一緒に過ごし、少しでも 
愚痴をこぼせれば、気が休まります。また、不安を感じているご家族や恋人やご友人にとっても、安心できる場に 
なります。 
 関連する情報が下記サイトにあります。ジャーナリストを支援する国際的な組織であるダートセンター(Dart 
Center for Journalism and Trauma: http://dartcenter.org/ )のHPの一部です。日本語で読めるコンテンツ 
があります。よろしければご参照ください。 
http://dartcenter.org/content/japans-triple-disaster-resources-for-journalists 
http://dartcenter.org/content/トラウマとジャーナリズム 
 私たちで提供できることがあれば、お申し越し下さい。できることは限られているかもしれませんが、できる限 
りお手伝いいたします。 
 ジャーナリストの皆様が無事で、こころおききなくご活躍できることを祈っております。 
2011年3月21日 
報道人ストレス研究会 
松井豊・安藤清志・井上果子・福岡欣治・畑中美穂・高橋尚也・張綺 
http://www.human.tsukuba.ac.jp/~ymatsui/index.html 
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