災害などにおける取材・報道マニュアル

A guide in Japanese, produced in the wake of the March 2011 earthquake and tsunami, to assist journalists reporting on victims and survivors of natural disasters, developed by the Reporters' Stress Research Group.

報道人ストレス研究会

惨事ストレスマニュアル 

updated 2011-03-21 

よりよい取材のために 

 このたびの災害で、いち早く現場に入り取材活動をおこなっているジャーナリストの皆様には、貴重な情報を広 
く社会に伝えていただいている事に心より感謝申し上げます。現場では、直接被災者にインタビューすることが多 
いと思われますが、以下に、被災者への取材をおこなう際の留意点(とくに、心理学的に重要だと思われるもの) 
をまとめてみました。よりよい取材を行うための参考にしていただければ幸いです。 
(1)常に敬意と思いやりをもって被災者に接してください。 
 自己紹介をし、時間をかけて、なぜその人に取材したいのかを説明してください。 
(2)精神的に傷ついている被災者の反応はさまざまです。 
 怒りをぶつけたり、混乱して話せなくなる人もいます。これは、その人の性格ではなく、異常な事態での「正常 
な反応」です。逆に、外からは平静に見える人でも、意識的、無意識に自分の感情を内に隠している場合がありま 
す。 
(3)急かさずに相手のペースに合わせてください。 
 途中で休憩を入れることも必要です。また、いつでもインタビューを中止してよいことを、前もって伝えてくだ 
さい。 
(4)相手が泣き出しても、落ち着いて接してください。 
 泣くことは自然な反応であり、その人が安心して話せることを示している場合があります。また、しばらく時間 
をおくと話を続けられることもあります。 
(5)答えるのが難しそうな質問があれば、尋ねてよいか確認してください。 
 そして、自分が多くをしゃべるのではなく、相手が十分に話をできるようにしてください。 
(6)何を話すか、何を話さないかは、被災者自身が決められるようにしてください。 
 提供してもらう写真を選ぶ場合も同じです。「自分で何かを決めること」は、被災者にとって、とても大切な行 
為です。 
(7)上手な聞き手になってください。 
 言葉による受け答えだけでなく、相手の話にうまく対応させて目を向けたり、うなずいたりすることが必要で 
す。相手を受容し関心があることを示す上で、言語によらないコミュニケーションはとても大切です。 
(8)「はい」や「いいえ」で答えることができる質問は避けましょう。 
 単純で、しかも相手が自由に語れるような質問をしてください。ただし「いま、どのようなお気持ちですか?」 
は、避けたほうが賢明です。この質問は、「私はあなたの気持ちがわかっていません」ということを暗に伝えてし 
まいます。
(9)共感が過度にならないようにしましょう。 
 話を聞く相手に共感することは人間として自然なことですが、ジャーナリストとしてのレベルを超えると、被災 
者のためにも、あなた自身のためにもなりません。 
(10)取材をする自分自身が、神経質になったり怒りを感じたりすることがあります。 
 それ自体は決して問題でも恥ずかしいことでもありませんが、こうした感情が相手の理解を妨げることのないよ 
うにしましょう。 
(11)取材が特定の人に集中しないようにしてください。 
 たとえ気丈に見えたとしても、精神的な負担が非常に大きいことがあります。 
(12)インタビューの「終わり方」に配慮してください。 
 突然または一方的に中断することは、相手を傷つけてしまいます。また、最後に自分の連絡先を伝えておきま 
しょう。その場ではあまり話をしない人が、後日話そうとする気持ちになることがあります。取材について質問や 
問い合わせがあるかもしれません。 
 以上の項目は、ダートセンター(ジャーナリストの取材活動をサポートする国際的な組織)が作成した「トラウ 
マとジャーナリズム」の内容を参考にして作成されました。この他にも、私たちで提供できることがあれば、お申 
し越し下さい。できることは限られているかもしれませんが、できる限りお手伝いいたします。 
 ジャーナリストの皆様が無事で、こころおきなくご活躍できることを祈っております。 
2011年3月21日 
報道人ストレス研究会 
松井豊・安藤清志・井上果子・福岡欣治・畑中美穂・高橋尚也・張綺 
http://www.human.tsukuba.ac.jp/~ymatsui/index.html 
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